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オオカミ少年とおねえさん

第28章 桜井家の最終兵器



私の双子の妹。
そういえば彼女らの受験が終わって、進学してから会っていなかった。
歳も随分離れてるし、私の感覚としては妹というよりよく面倒をみていた姪なんてものに近い。

うちの家系らしく縦に成長はしてるものの、全体的にスラリとした体型はまだまだ幼さを思わせる。
以前の琥牙だったら、並んだらしっくりきたのかな。


「莉緒、いい加減にしなさいよ。 お姉ちゃんにもその人にも失礼でしょ」

「美緒ってばガキね。 恋は理性でするもんじゃあ、ないの」


私は食欲なんてどっか行っちゃったんだけど、戻ってからも動いてないと調子が悪いのか、毎日ジョギングなどをしてる琥牙はお腹が空くようだ。

体を鍛える目的というよりも、その様子は自主的に散歩に行く犬に似ている。

莉緒と向かい合わせに座り(というか莉緒が勝手に座った)、スライスしたカンパーニュをちびちびと口に運んでいた。


「おれは本能でもそれ無理だから……あの、食べにくいからそんなに見な」

「きゃああああああ、声までカッコいい!! やだそんなに見詰めないで!」

「…………」


助けて真弥、とでも言いたげな顔で救いを求めてくる琥牙に両手を合わせてゴメンをしといた。

そんな二人を目の端に置きながら、キッチンで私と美緒が話を続ける。


「……あの子って子供の時から惚れっぽいというか。 正確にいうと、異性に慣れてないんだよね。 でも、なんかしばらく見てない間に、更に酷くなってない?」

「だってずっと家に居たのがあの過保護ゴリラなんだもん。 お姉ちゃんが家を出てって思春期になってから、近付く男性は手当り次第遠ざけられてきたしね」


大変なんだよ、傍に付いてないとナンパにもすぐに引っかかるんだから。 そんな美緒の切実な訴えを聞いてうむむと唸る。
まさか自分の妹がそんな厄介に成長してるとは。



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