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オオカミ少年とおねえさん

第26章 狼の里にて 後編*



早起きをして食事の支度や諸々。

その辺の段取りを頭の中でざっと立てたあと、念のために彼らの部屋で一緒に横になったはずだった。


起きたなり誰も居ないのに気付いて、慌てて広間に通ずる道を戻る途中に、やけに威勢のいい掛け声が聞こえた。


「な…………なんで」


セイッ! そんな声と共に剣道道着を簡略化したような格好に似たものを纏った朱璃様が、長い柄の槍を振っている。


「おう、真弥。 遅いな! 一緒にどうだ?」


おう、じゃないよ。

お義母様。 まだ寝てなければ。 言いかけて、その顔色がイキイキと普通に戻っているのに気付いて愕然とする。


「私は20年程、槍術をやっていてなあ。 体術や剣技はどうしても、体の大きさがものをいうからな。 このあとはまた祈りを捧げてから、午後は弓をやる予定だ」

「みんなは…供牙様……は? 」


「せっかくだから外で皆の立ち合いをしてもらっている。 あれ程の猛者は滅多に居らんからなあ」


でもお義母、まだ体が回復してないはずです。 そう言って止めようとするも、後ろからくいと私のスカートを引っ張っている伯斗さんに気付いた。


「ハハッ! あれだけ眠って食えば充分、充分!!」


先端に布を張った槍を再び掲げ始めた朱璃様を見詰めながら、長らく忘れてましたけど、朱璃様の体力は野生動物以上なんですよ。 と説明してくれる。


「世の中の殆どの事はそれを覆す根性と集中力でなんとかなると、信じているらしいです。 逆境があれば余計に燃えるタイプなんですね。 昨晩の事も、よくよく聞くと実は空腹過ぎて倒れただけとかで」

「はあ……」


そう言って諦めたような表情で朱璃様を見守り始めた伯斗さんを尻目に、軽く額を抑えながら外への階段を上る。


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