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オオカミ少年とおねえさん

第25章 狼の里にて 中編*



その後ろ姿をじっと見送ってると、その間に伯斗さんが室内に走っていた。
その方向を振り返ると、既に供牙様が朱璃様を抱き起こしている。


「外傷は特に無い。 だが酷く衰弱している」


その体がいつもより更に小さく見え、痛々しい。
顔色もまるで息をしているかわからない程に白かった。


「とにかく寝かせて、休ませないと……供牙様?」


朱璃様から体を離して片膝を折って俯いたまま、供牙様も動かない。


「大事無い。 だが、これ以上保つのは難しい。 ……こんな時に」


朱璃様が倒れてからずっと辛かったのだろうか。
なのに、あんな無茶をして?


「肩貸すよ」


二ノ宮くんが供牙様を助け起こし、雪牙くんも朱璃様に駆け寄った。


「じゃオレは、母ちゃんを運ぶ」


「私は看護をします」

「いえ私がやります。 お二人を奥の、同じ部屋へ運んで下さい」


伯斗さんには悪いけどその辺は信用してない。

予想とは違ったけど、今回は薬や救急セットなどを準備してきて良かったと思った。
ここには薬草も豊富だと聞く。
知っている人に聞けば色々教えてくれるだろう。



***
以前に雪牙くんが療養していた部屋に布団を並べて二つ引き、そこで二人を休ませる事にした。
供牙様は自分はどこか悪い訳では無いから寝ている必要はない。 そう言って半身を起こし、背中に積んだ座布団にもたれている。


「そういえば、今回は他の狼たちの姿も気配もありませんね」


最初にここに着いた時から、妙な静けさを感じていたのはそのせいもある。


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