第24章 狼少年を追え*
「きっとこうなるだろうから、真弥に会いたくなかった。 分かってたんだけど」
そう呟き目線を斜め下に注いた彼が、今度はドア口に体ごと顔を向ける。
「でもおれがやらなくても、あんたが真弥を助けたんでしょ? 覗きとか悪趣味だから止めてよ」
「───そんなつもりは無かった。 あんまり真弥が不憫だったからな……ここはお前に会わせた方がよかろうと」
琥牙が口を開いたややのちに、足音も立てずに入口に姿を現したのは供牙様だった。
「供牙様……なんで」
いつから居たんだろう?
供牙様が驚いている私に目を配ってから琥牙に向き直る。
自分よりも一回りも二回りも体の小さな彼を一瞥し、ほう、とでも言いたげに興味深げな表情をした。
「お前の気持ちも分からなくないがな」
「…………」
「しかし女性に乱暴は良くない。 真弥、大丈夫か?」
「あ……はい」
いつの間に呆けたように壁にもたれていた私は、差し出された手を取ろうとそれを伸ばした。
そうしつつもどことなく、以前中華料理店で感じた疎外感のようなものを思い出していた。
特に話さずとも、彼らには分かる存在。 理解出来ること。
……私には分からない。
「おい、真弥に触んな」
分かりたいのに分かれない。
なのにそんな事を言う琥牙に腹が立った。
分からないから話そうとしたのに、聞いてくれなかった。
マンションを出た時もそう。
ろくに説明もせずに。
それなのに、私を縛ろうとする琥牙が勝手過ぎると思った。