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オオカミ少年とおねえさん

第24章 狼少年を追え*



……せっかく時間を作ってくれた相手の都合も考えず、また失礼な事をしてしまった。


「ははっ、いいよ。 桜井さんって新鮮だね。 毎度」


昨晩の事といい。
琥牙が絡むと私はどうにも周りが見えなくなるみたいだ。

とりあえず落ち着くために一呼吸おいてから、久々に会った相手に向き直る。
子供じみた態度を取ってしまった私に対し、高遠さんが物柔らかな様子で先の歩道を指した。


「まあ、せっかくだしそれなら話しながら行こうか。 思ってたより元気そうで良かった」

「高遠さんも……前回は話の途中でごめんなさい。 お客さんの所って、自社以外にも出掛ける事あるんですね」


そうやって話し始めると気持ち的にも余裕が出てきて頭が冷えた。

落ち着いて考えてみると。
そもそも何度か見たからって、今日も彼がそこいるとも限らない。

それでもなにかしらの手がかりはあるだろうし、この辺りにいるのならばそれだけでも有力な情報だと思う。


この辺りは基本的には住宅街が多いといわれているが、駅周辺は普通に商業施設が立ち並ぶ。
そこから歩いて数分で、見慣れない名前の、確かにビジネスホテルらしき建物の前に高遠さんと私は到着した。


「今どきチェーンじゃない所も珍しいですね」

「そうでも無いよ。 駅前ってわけでもないし。 ちょっと前のサラリーマンなんて、経費浮かせるためにこういう値段の安い所よく探してたって」


自分が出張などが滅多にない職場だけに珍しく、中に入ってすぐにその古そうな建物の中を見回した。
不潔だとか汚い印象はあまり無いが、どことなく暗い雰囲気で、繁盛している様子とも言い難い。

桜井さん、こっち。 手招いて私を呼ぶ高遠さん曰く、フロントは二階にあるらしく、入口付近にあるエレベーターに案内してくれた。


「ここのロビーで待つのもいいんだけど、カフェも無くって落ち着かないんだよね。 ちょっと待ってて。 実は俺、ここの支配人と知り合いだからついてきたんだよ」



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