第24章 狼少年を追え*
……くっ。
悔しいけど、私はこの人にそんな事を言われると弱い。
『怒らないで。 おれは真弥の笑ってる顔が好きだよ』
いつかそんな風に私をなだめてきた琥牙とどうしても被るのだ。
というか、なんだか泣きそう。
恋しくて。
供牙様を見てたら彼に会いたくて。
「また寂しいのか? 真弥」
知らずのうちにぽろっと零れてしまった頬の水粒を指ですくい、それを塞き止めるように供牙様が瞼に唇をつける。
「朱璃から頼まれてると、いってもな……私はお前のそんな顔は見たくない。 同じ頬を濡らすなら私に抱かれて泣くといい」
私の体に回された腕は相変わらず優しく、それでいて強い力だった。
「供牙、様。 だめ……です」
「心は強くあろうとしても体は乾く。今生のお前にそう無体な真似はせぬ」
何も考えなくていい。 そううわ言のように耳許で彼が繰り返す。
明かりが消された真っ暗な部屋で私を抱きしめられて、いつかの月の下で私を抱いた供牙様と同じ錯覚を覚える。
時折抵抗して彼の胸を押す私の手首を緩くシーツに押し付けた。
「過信はしておらぬが、お前を慰められるのは……伴侶の他には私だけだろう」