第3章 推されても困る
そして話は現在、冒頭に戻る。
寝入る琥牙と室内で私と話し込んでいる伯斗さん。
「何にしろ、良い兆候です。 琥牙様の選択は間違いでは無かった」
(狼的に)ほくほく顔の伯斗さんである。
あれからちょくちょくこうやって様子を見に来てくれる。
琥牙の事が気になるのが一番なんだろう。
とはいえ私の事も色々と気にかけてくれているらしい。
「けどあの、琥牙がいるからって、大してうちは経済的に変わってませんよ? 家の事もしてくれますし、むしろちゃんと自炊するようになってからこっちも健康的に助かってる位で」
私の怪我の回数も減ったし。
ちなみに初日に貰った石。
ゼロが軽く6つ並ぶ代物だった。
あれはいつか琥牙が居なくなる時に返す予定でデスクの引き出しに閉まっている。
「それに着る服も、元々私が持ってる男性物の服でほぼ間に合ってますし。 そもそも琥牙ってなんで私みたいな歳上でデカい女の事なんかを気に入ってるのか、サッパリ分かんないんですけど」
特に自嘲するでもなく私は頬に手を当てた。
ベルセルクなどとも形容されるいかつい狼男というより美少年、といった言葉の方がまだしっくり来る琥牙。
彼の隣に並ぶのは儚げな美少女の方が絶対似合うと思うのに。絵的な意味で。