第19章 狼社会の不文律
そうやって二ノ宮くんと話しなが歩いているといつの間にか私の背後から雪牙くんが追いついてきた。
「里以外のヤツに初めて会った。よろしくな!」
こういう時の雪牙くんって不思議と楽しそうだ。
「二人とも、頑張ってね!」
まるで何かの試合を応援する如く声をかける私に二人が微妙なリアクションを返してきた。
「それ素なんだよね?」
「真弥はオレの事応援しろよ!」
だって二ノ宮くんの気持ちもわかるし。
どこかの国みたいに生まれながらに運命が定められてるなんてそれも悲しい。
古い街並みの一角。
重そうなくすんだガラスのドアを引き、彼が入っていったのは廃業したらしきカラオケボックスだった。
カラオケボックスといっても、吹き抜けで奥まったホールが広い造りらしい。
しんとして、こんな街の外れでは取り壊すのも躊躇らわれ放っておかれてるであろう建物。
街中で流血沙汰、そんな事態は避けられそうでほっとした。
「でも俺さ、三日間待ってたのお前じゃないんだよ」
フロア中央に進みクルリと振り返った二ノ宮くんが雪牙くんに向かってちょっと申し訳なさそうな表情をする。
「まずはオレに勝ったらな」
私は雪牙くんから離れた後ろにいたけれど、彼を見ている二ノ宮くんの表情が段々と硬くなっていったのが分かった。
二人の間は数メートル程だろうか。
両方共、じっとそこから動かない。
壊れた窓ガラスからは乾いた夕風が入り込んでたけれど部屋全体が暑いと感じた。
それぞれの体から発する熱気からというか。
それが雪牙くんの方が圧倒的に大きい。
闘気。 見えない圧力に包まれたそれをそんな風にもいうのかもしれない。