第15章 月色の獣 - 新月に疾く
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「………殺ったか」
「ああ、もうピクリとも動かない」
最期は抵抗しなかった。
ああ、実際は呆気ないものだったな。
男が足元の黒い塊を爪先でコン、と蹴る。
「しかし、どうするか……どこか近くに白髪の男がいるはずだ」
「雇い主が殺られたとあっちゃ俺達も手ぶらで帰る訳にもいくまい」
しばらく無言になる男たちの耳に、もう命の火が消えかけた微かな声が届く。
「……まだ生きてたのか」
「おい庭師。 白髪の男はどこだ? お前は会った時に怪我をしていた。 俺達がその仇を取ってやる」
「……………」
その後間もなくその初老の男の瞼は完全に落ち切った。
「あいわかった。 こんな事情で墓も作ってやれぬがすまぬ。 ……ゆっくりと休め」