第14章 月色の獣 - 狼の里*
その日々は里に来て、たった6年で突如変化をむかえた。
野草を摘みに外へ出ていた加世と彼女を守るための数匹の同胞が二人の家に連れて来たのは、かつて加世が暮らしていた実家の庭師だった。
「……よもや加世様が、こんな所にいらっしゃるとは」
懐かしく感じた。
供牙に飯をやったり体を撫で、時には悪戯を叱ったりと、実家にいた時に世話をしていたのはこの男だった。
周りの狼達は困った表情をしていた。
いくら追い払おうと脅しても、この男は加世に縋って離れようとしなかったと。
そして害をなそうとすると加世にきつく咎められたのだと。
そんな彼等の声を聞いた後、供牙は人の姿で男の前に姿を現した。
「何の用向きでこんな所に来た」
「あなたが………あなたの事はみなの間で人狼、そう呼んでいます。 狼の群れを引き、巨躯で白銀の髪を持ち、まるで獣の様な身のこなしで人に仇なす者だと」
「質問に答えていない」
「それが加世様を拐かした者であると。 旦那様は今も加世様を大層心配し、探し回っておられます」
その言葉にびくりと加世の肩が震えた。
この男は危険だ───────────
そんな加世を見て、我知らず供牙の喉の奥から低い唸りが漏れる。