• テキストサイズ

あなたの…【鬼滅の刃】 短〜中編

第7章 初恋  【悲鳴嶼】



・・・・・・・・・・・

悲鳴嶼行冥 11歳。

父は流行りの病にかかり、母は出産した時に亡くなった。
身寄りのなかった行冥は寺に預けられ、育った。
生まれながらに盲目だったが、他の感覚が鋭く、この歳には不自由なく生活できていた。


ある夏の昼。
住職が行冥を呼び出した。


「行冥、今日からこの寺で共に過ごすこととなった。
色々と教えてやっておくれ。」


住職がポンと肩に手を置くのは、自分と同じ頃合いか…
笑顔を失くしたような少女。


実際に見えているわけではない。
その人間を肌で感じ取っていて、
色…というか、纏う気が表している。




「悲鳴嶼行冥です。」
「……。」

彼女は何も言わなかったが、行冥は気配で会釈された事を悟った。


住職はその後すぐに村の法事へ行ってしまい、仕方なしに行冥が寺の案内をする。


「ここが厠、その隣に風呂があります。
…そして…」

行冥が説明していると、くんっと甚平の袖を引かれた。

「?」
少女は首を傾げる行冥の手を取り、掌を開かせる。
そして、そこに指で文字を書き始めた。

「わ、た、し、は、み、み、が、き、こ、え、な、い」

そこで行冥は今までの全てを悟った。
耳が聞こえない彼女は話すこともできない。
名前を名乗らなかったのも、ずっと声も出さなかったのもそのせいだと。
慌てて行冥は少女の手を取り、ごめん、と書いた。

すると、行冥の唇に彼女の指が触れる。
ひんやりとした指だった。

…どうやら読唇術はできるらしい。



/ 283ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp