第1章 贈り物 【時透】
ん?
気づけば誰かの腕の中。
さらりと揺れる長く毛先に向けて白群色の髪。
これは…と顔を上げると、見たことないほどの笑顔を浮かべる時透の姿。
「本当?いいの?こんなに嬉しい贈り物は初めてだよ!!」
時透の弾んだ声。
「みんなからの贈り物、奏だったなんて!
どうして分かったんですか?わぁ、嬉しい!」
ぎゅーっと抱きしめられる。
く…苦しい。
「お、おぉ!そうだ!奏が贈り物だ!!」
一体何が起きているんだと、ついていけていないのに適当なことを言う宇髄。
「宇髄、テメェ…」
不死川が何かとめようとしてくれてる。
「く、くるし…」
「リボンつけて。そっか!たくさん食べてって言ってたから…
じゃぁ、早速いただこうかな!」
「と、時透くん!それは…こっちの」
「じゃ、皆さんはゆっくりしていてください!
俺は奥に行きますね。台所、好きに使ってください!」
「ちなみに、俺の好物…ふろふき大根かな。」
「わ!わわ!えっ?何?えぇ?」
甘露寺の制止も虚しく、奏は横抱きにされ時透に連れていかれる。
皆、止めようとはしたものの、あんなに満面の笑みで嬉しそうな時透を見て、止められなかった。
「行っちまったなァ。」
「あ、あぁ。とりあえず…食うか。」
宇髄の声により、とりあえずは食べようと皆でケーキを頬張る。
心なしか皆話す声が大きい。
静かにしたら聞きたくないものが聞こえてしまう気がして。
味わったかどうか…。
急いで食べて、急いで片付け、急いで帰っていく。
奏がぐったりと茶の間に戻った時は、誰もおらず置き手紙が置いてあった。
『おつかれ!
ケーキは冷蔵庫に入ってるよ!
仲良く食べてね!』
「奏、最高の贈り物だよ!
そのケーキ食べたら…また…ね?」
「ひぇっ!!!」
奏もケーキの味を味わったかどうか。