第5章 目的 【煉獄】
〜♪
車内に次の駅に着く知らせが鳴る。
「あ、ここです!次で降りますよ!」
「次か!分かった。」
慌てて握られていた手を抜き、わたわたと用意をする。
あのままでは気を失ってしまうところだった。
そんな奏の様子を見て、気づかれぬよう煉獄はニヤッと笑う。
無事に降り、改札へと移動する。
「ここからはバスになります。もう少しなので頑張って下さい。」
「全く問題ない!」
コツコツと煉獄の革靴と、奏のパンプスの音が鳴る。
「あ、その前に、今日泊まるホテルのチェックインをしますか?
荷物…置いていった方がいいですよね?」
「そうだな!できればありがたい!」
駅前の無難なビジネスホテル。
そこを予約している。
私もその近くのビジネスホテルに泊まる予定だ。
彼氏という設定なのに、
私だけ実家に泊まるわけにはいかないから…
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「すみません、予約した西ノ宮なんですが…」
『確認しますね…。…申し訳ありませんが、お名前がないのですが…』
「え?」
『WEB予約ですと、完了した時にメールが届いていると思います。』
慌ててメールを見てみると…
ない。
『もしかしたら、最終段階で確定を押し忘れてしまっていたのかもしれませんね。
…本日は満室となってしまっていまして。
申し訳ありません。』
綺麗なお姉さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「わ、分かりました…すみません。」
なんだか嫌な予感。