第5章 目的 【煉獄】
「乗車券を支払わせて申し訳ないな。これで足りるか?」
特急に乗り込み、座ってしばらく経った時
品のある茶色の長財布から煉獄さんは一万円を取り出した。
「いや、これは私の依頼なので!」
「3万円の報酬も出しておいてか?」
「だって、知らない女の実家に行かないといけないんですよ?
3万円だって来てくれる人いないと思ってましたから。」
私がそういうと、煉獄さんはふむ…。何かを考え込んだ。
「分かった。じゃ、君からの要求は何でも飲もう!
3万円も受け取る。しかし、その代わりと言っては何だが、俺の依頼も受けてくれないか?」
「えっ?依頼…ですか?」
「あぁ、難しいことや嫌なことは要求しない。
簡単なことだから。」
「は、はい。私にできることなら…。」
煉獄さんがニコッと笑った。
「交渉成立だな!」
「…で、依頼とは?」
「そうだな、まずは君の依頼を先に無事遂行できてから頼む事にする。
明日の夜にでも伝えよう!」
「…?分かりました。」
私は何も疑うことなく、微笑んで頷いた。
イケメンの頼みなら何でも頑張れる気がする!
その時、私は気づかなかった。
彼の口角がニヤッと上がったことに。