第5章 目的 【煉獄】
「…はい、もしもし?」
『あ。お疲れ様。
今大丈夫?今年は帰ってくるんでしょうね?』
——やっぱり。
「残念ながら、このお盆中は無理よ。
新盆の先生と変わっちゃって、今回全出勤だから。」
『あら!それは大変ね…。残念だわ。
でも、ちゃんと代休はもらえるんでしょ?』
「うん。1週間ずらして、土日も挟んでくれるから5連休していいんだって。」
『まぁ!5連休も!』
——あ。しまった。
『あのね、実はお盆の集まりもズレたのよ。
5連休もあるんだから土日くらい来れるわね。
金土日で来なさい。待ってるから!』
「えっ、いやちょっと待って!私にも予定ってものが!」
『どうせ彼氏だっていないんでしょ?
その歳で1人暇してるんだから来なさいよ。』
「か、彼氏くらいいるわ!」
『…えっ⁉︎』
「え?」
——なんか、とっさにとんでもないことを言った気がする。
『ねぇ!ちょっと奏、彼氏できたんだってよ!!』
お母さんは家の中にいる誰かに向かって叫んでる。
『はぁ⁉︎ちょっと奏本当なの⁉︎
咄嗟についた嘘じゃないでしょうね?』
——うわぁ、一番聞かれたくなかった…
姉の里美。
3つ上で既婚者。
子供も2人いる。
奏を溺愛しすぎて、恋愛事情に首を突っ込んでくる。
「う、嘘じゃないわよ。」
——素直に嘘でしたって言え!私!
『来週、連れてきなさいよ。』
「へ?」
『本当なら連れてきなさい!みんなで見てあげるから!
奏に相応しいかを!』
「いや、そんな都合を合わせられるような…。」
『やっぱり嘘ついてるんでしょ?』
「嘘じゃないわ!」
…ということで、何がなんでも来週までに彼氏を作らなければならなくなりました。