第1章 贈り物 【時透】
時透邸へと着いた3人。
申し訳ないが、諸事情によりこっそりと上がらせていただく。
時透たちは道場にいるのでバレないだろう。
茶の間へと入り卓袱台の上にパンケーキをセットした。
「おう、無事にできたかい。」
顔を覗かせるのは宇髄。
「ひゃ!!」
彼は元忍。
気配を感じさせずに近寄ってくるのは流石だ。
「奏はそろそろ俺に慣れろよなぁ。
すげぇ美味そうじゃねぇか。しかし、こんなに食えんのか?」
高く積み上がったパンケーキは卓袱台に乗せると、しのぶを少し超えて丁度奏の身長くらいだ。
「甘露寺さんと煉獄さんならあっという間なんじゃないですか?」
奏がそういうと、確かに…と納得された。
「宇髄さん、これ、お願いします。」
胡蝶がにっこりと生クリームの入ったボウルを渡す。
「げっ、まだ来るんじゃなかったか…」
そうボヤきながらも泡立てると、あっという間に角の立つ生クリームが出来上がる。
それを甘露寺は上から塗り、立派なケーキが完成。
そして、みんなで持ち寄った果物たちを乗せていくと、それはそれは豪華なものだった。
「わぁ!すごい!」
奏が目をキラキラして見ていると、宇髄がリボンを取り出し、このケーキのどこに巻くかを悩んでいた。
「どうすっかな…これ。」
いやいや、巻けないでしょ!
そう突っ込みたかったが、下っ端にそんな勇気は出ず。
「綺麗なリボン!楊枝で刺します?」
「あると贈り物感が出ますよね。」
え、みんなこのリボン諦める気無し?
「そ、そのリボンは…」
付けるところ無いから諦めた方が…と言いかけた時。
「お、そうだ。甘露寺このリボンをこいつの頭に括ってくれ。」
「え、あ、はい。奏ちゃん、ごめんね。」
あれよあれよとリボンが奏の項を通り頭の上で蝶結びにされた。
「よぉし!そしてそこに立て!!」
奏は宇髄が指示した場所に立つ。
視界には白く輝き、甘い匂いのケーキしか見えない。
「わぁ!なるほど!これでケーキにリボンがしてあるように見えるってわけですね!」
「私じゃ低いから奏さんがいて良かったです。」
すると、ざわざわと騒がしくなってきた。
「あ、みなさん来ましたね。」