第4章 帰る場所 【冨岡】
「おとーしゃん、おかーしゃん。」
「はぁい。こっちよ。お母さんはこっち。」
「お父さんはこっちだ。こっちにおいで。」
春の暖かい日。
俺たちは近くの桜並木を見にきた。
おとーしゃん、おかーしゃんと俺たちを呼ぶのは
かわいい息子。
義優(よしまさ)という。
男ならば一文字は義を入れたいと奏が提案してくれたので、優しく育ってほしいと願って義優と名付けた。
そして、今は義優が俺と奏の、どちらに来るかを争っている。
笑顔でこちらに向かって来る義優。
よし、そのままこちらにくるんだ。
いつも一緒に遊んでいるもんな。
かわいい義優が腕の中に
入る直前、方向を変えて奏の腕の中に飛び込んでいった。
「わぁ!きたきた!ぎゅーっ」
まさかの直前で敗北するとは。