第4章 帰る場所 【冨岡】
奏は3年前に鬼によって一家を惨殺された。
俺が駆けつけた時には風呂場で1人縮こまり震え泣いていた。
身寄りもなく、1人で生きていくしかなかった15の彼女を1人にはできなかった俺は、俺の屋敷で働いてくれと頼んだ。
賃金を支払い、お金が貯まったら
彼女の人生を再出発するはずだった。
しかし、同じ屋根の下。
男女が一緒に住めば…感情も湧く。
俺はその心配はないだろうと思っていたが。
愛しくて堪らなくなった。
俺も家族を鬼により亡くした身。
友も失い、笑顔など俺の顔からは消えていった。
それに柱になる資格もない俺は、他の柱達と仲を深めようなどとも思えず、喋ることも少なかった。
辛いことがあったのに奏は表情豊かで
コロコロと楽しげに笑い
でもふと悲しい目をして
時には怒ることもある。
明日をも分からぬ命の俺からすれば奏との
ゆったりとした時間がかけがえのないものだったんだ。