第4章 帰る場所 【冨岡】
…バレたか。
「笑みを絶やしたことのない人みたいだ。」
今日は上手く塗れたみたいだな。
実は俺が朝見かける時はそっと応援しているんだぞ。
その甲斐あったな…。
それを知ったらまたお前は怒るだろうから。
俺の恋人はのんびりやだ。
しかし、それが穏やかで良いところだと思っている。
「奏、時間だ。
洗い物は俺が洗っておく。」
だから早く出発しろ。
「えぇっ、それは悪いわ。」
悪いわけあるか。
朝早くから朝食も作ってもらっているのに。
「…ならばこれで代償をもらおう。」
俺は奏の唇に口付けた。
「上手く塗れた紅を分けてもらった。
これで俺は満足だ。」
自分の唇についたであろう赤を、ん…ぱと馴染ませてみる。
「……!!」
ポンっと頬を赤らめた奏は何て可愛いのか。
「ほら、遅れるぞ。」
「き、今日は遅くなると思います!」
そう言って急足で出ていった。