第2章 鳥籠の鳥 ❇︎ 【煉獄】
付き合って1ヶ月。
あれから、キスはするもののそれから先に進むことはしなかった。
恥ずかしがり屋な奏はなかなか言い出すことができないのだろう。
まぁ、俺は遠慮なく奏の部屋にも行けるし、抱きしめられるし、キスもできる。
身体に籠る熱は奏の声、体温、仕草を思い出し、スマホに映る今の君を見ながら慰める。
以前よりも贅沢だ。
しかし、今日は珍しく君から呼び出しがかかる。
電話越しの君の声は震えていた。
俺はその電話を切ると、すぐに帰り支度をする。
その時、宇髄が声をかけてきた。
「…優しくしてやれよ」
彼はどこまでどういうつもりで言っているのだろうか…。
俺は、あぁ。と返事をして奏の元に向かった。
アパートに着いて、インターホンを鳴らすとドアを開けて奏が抱きついてきた。
その体はカタカタと震えている。
「どうした⁉︎大丈夫か?」
小さく首を横に振る奏。
一体何があったのか…。
とりあえず、部屋に入れてもらい話を聞く。
奏が震えていたのは、やはりストーカーの件。
最近、毎日のように紙が挟まっていて、見張られている気がするようだ。
まだ直接的な被害はないものの、どうしていいのか分からないという。
最近は職場の同僚に帰りは送ってもらっているという…。
「ちなみに聞くが、送ってもらうのは女性か?」
「え…はい。」
「そうか、それなら良かった。もし男性だと変な気を起こしかねないからな。君に何かあったらと思うと…。」
何かあったらと思うと…
殺したいほど憎くなってしまう。
「ありがとう、煉獄さん…。
少し落ち着いてきた…」
涙を拭いながら俺の腕の中にいる奏は小動物のようだった。
小さく震えて飼い主に縋っているような。
「あぁ、俺がいつでも抱きしめよう…。
君に何も起きないように俺がしっかり見守る…。」
俺の言葉にホッとしたのか、珍しく奏からのキス。
チュッと短く音を立てて離れていく。
俺は堪らずぐいっと引き寄せ、いきなり深くキスをする。
半ば強引に舌を入れたと言われても過言ではなく、逃げる奏を追い回すように。
俺から逃げられるものか…。