第21章 我儘が聞きたい【煉獄】
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プルルル…
タクシーの中で俺は奏に電話をかけるが、3度ほどかけても出なかった。
「やはり寝てしまったか…。」
あと10分で日付が変わる。
「運転手さん、ここで結構です。」
タクシーを降りてマンションへと入る。
エレベーターを待つ時間さえ惜しい。
エレベーターだって早いのだが、こう急いでいる時はどうしてとても遅く感じてしまうのだろう…。
チン…と音を立てて扉が開くと数メートルしかない距離を慌てて駆けていく。
カードキーでドアを開けると、中の光が漏れる。
「灯りが…付いているのか。」
「ただいま。」
一応声をかけてみるが、応答はない。
眠っているのだと思った俺は、コートを掛け、ダイニングへと向かった。
テーブルの上には軽食がラップをかけられ並んでいた。
そして、飲もうと思っていたのかシャンパングラスが2つ。
「いつもは飲まないのに…。今日を楽しみにしていたんだな。」
奏の気持ちを考えると、俺まで残念な気持ちになってくる。
一先ず、手を洗おうとジャケットを脱ぎ、ソファーに置いておこうとした。
「…!!!」
すると、そこには奏がすやすやと眠っていた。