第21章 我儘が聞きたい【煉獄】
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23時。
うーん。
私は壁にかけてある時計をみて唸った。
「遅くなってしまうとは思うが、必ず今日中に帰る!」
そう言って朝出て行ったけど…。
「やっぱり、無理だったのかな?」
スマホを見ても連絡はない。
この時期、俳優の杏寿郎はクリスマスのイベントや、雑誌の取材などで忙しくなる。
鬼滅の刃が大ヒットし、杏寿郎の演技力、ビジュアルが高く評価され、仕事の幅も大きく増えた。
嬉しい反面、家に帰る時間も必然的に遅くなり、杏寿郎は少しお疲れ気味にも見える。
部屋に飾られたクリスマスツリー。
2年ほど前までは友達を呼んで朝までパーティーなんてしたりして。
そんな日々が懐かしくなってしまった。
「杏寿郎、ご飯は食べたかな?」
きっと外も寒いだろうな。
私はとりあえず彼が帰ってきて不自由のないように、軽食の準備と、お風呂を沸かしておく。
24時まで…待ってみようかな。
帰ってきて、部屋が暗かったら寂しいだろうしね。
私は読みかけの本を持って、ソファーに座る。
柔らかく包み込んでくれるクッション。
帰ってくるまでは寝ない…そう思っていたのに、まるで催眠術にかかったかのように。
私はいつの間にか目を閉じてしまっていた。