第20章 可愛いあなた 【不死川】❇︎
今目の前にいる不死川さんの目はぱっちりと開かれていて、膝枕のまま仰向けで私の顔を見ている状況。
「え…寝て…」
「ねぇよ。」
そうして不死川さんの手が私の後頭部に回され、グイッと下に引き込まれて…
唇に柔らかくて温かな感触。
ちゅっ…と音を立てて離れた時、今唇に当たっていたのが不死川さんの唇だったと知る。
「西ノ宮、待たせすぎだァ。」
私の頭は真っ白。
何、何が起きたのだろう?
本当に間違いが起きたのか…?
「不死川様…これは、気の迷いですか…?」
私の質問にパチっと大きな目が瞬く。
「お前、これが気の迷いに見えるかァ?」
「だって…じゃ、夢かな…?」
「おいコラァ、現実だァ。」
私はもう一度ぎゅっと目を瞑ったり、
頬をつねったりした。
目を開いても状況は変わらないし、
頬もちゃんと痛い。
…現実だ。
「初めて助けた時、柄にもなく一目惚れしたんだァ。
でもお前は町娘。もう関わることもない。
そう思ってたんだがなァ。」
「鬼殺隊に入って今では甲。流石にビックリしたぜェ。」
不死川さんは私の髪を指先に絡める。
「こんな危険な世界に、俺が引きこんだんだな…。
命がいつ無くなるかわからない世界に…。」
「…っいえ、きっかけはそうですが、自分で選んだ道です。
そんな風に思わないでください!」
不死川さんは少し驚いたような顔をして、フッと微笑んだ。
…優しい微笑み。
「じゃぁ、責任取らねえとなァ。」
「責任…?」
不死川さんはむくりと起き上がると、私の頬をそっと撫でる。
それは、大事なものを愛でるような優しい手つきで。
「奏、俺はお前が好きだ。…ずっと。
任務が一緒になる時は、お前に怪我させねぇようにって必死だった。
お前にはお前の人生があるからなァ。他のやつに恋をするなら諦めようと思ってたんだがァ。その必要もないな?」
「奏、俺のモンになってくれ。」
真剣な眼差しで私を捕らえる。
私は今度こそ夢だと思ったけれど、こんな嬉しい夢ならば大歓迎だ。
「不死川様のモノにして下さい…。」