第20章 可愛いあなた 【不死川】❇︎
だが、私は想定外すぎて困っている。
…特にやる事がないからだ。
「あの、不死川様、私雑用をしにきたんです。
何なりと言っていただければ…」
「んー…?じゃぁ座ってろォ。」
「え…⁉︎では、掃除!掃除をさせてください!」
「掃除は朝済ませたから必要ねェ。」
「え…えぇ…。」
1日目からこの調子である。
訪ねた時間だって朝と言える時間だ。
それなのにやる事がなく、ただ座っているだけなんて…。
するとスッと立ち上がり、縁側から外へ出る。
そして、徐に木刀を持ち、素振りをし始めた。
さっきまで、少し眠かったのだろう。
いつもの力強い目がウトウトと細められたり、また見開かれたりしていたのだ。
見ていたら怒られるかもと思ったけど、意外と大丈夫だった。
ヒュン、ヒュン…!!と音を立てる木刀。
少し捲られた隊服から覗く腕は、筋肉質でしなやか。
そこに数多く見える傷跡。
不死川さんは稀血だ。
それに稀血の中でも珍しいのだと聞いた。
毎回ではないらしいが、自分の血で誘き寄せ鬼殺をしている。
柱だって人間だ。
どれだけ鍛錬したって、何度傷を負ったって痛いものは痛い。
それなのに、自分で切りつけるとは…。
私はその傷跡を見てキュッと胸が痛んだ。
「西ノ宮…。やるかァ?手合わせ…。」
「え…。良いのですか?」
急に声をかけられ、手合わせをする事になるなんて。