第19章 番(つがい)
私を囲う籠ごと脚の爪で掴み、ぐんっと持ち上がっていくのを感じる。
「…!貴方…」
「虹丸!!その可愛子ちゃんを避難させたら、あの鬼に仕掛けるぜ!!」
彼の主は『虹丸』とそう呼んだ。
虹丸…
貴方が生きていて良かった。
「ねぇっ、お願い。私も一緒に連れて行って!」
「……!!」
思わず口からそんな言葉が飛び出していた。
虹丸は何も言わずに、私を建物の中に入れた。
そして、格子の鍵を鋭い嘴でガチンッと壊す。
「これでお前も自由の身だ。あとは自分で決めるんだな。」
そう言って虹丸は主の元に戻り、すぐに得体の知れない化け物へと向かって行った。
私は壊れた鍵を見た。
あんなに私を縛り付けていたはずの銀の鍵が、こんなにもあっさりと壊れてしまうなんて。
嘴でそっと扉を突けば、最も簡単にキィ…と開く。
そっと外に出れば、思ったよりも暗く、不穏な空気が黄色の羽を逆立てる。
(これで私も自由の身。)
もっと嬉しいものだと思ったが…。
私はパサっと羽を広げる。
こうして伸び伸びと羽を広げたのはいつぶりだろう。
夜空に向かって羽ばたき、私は宙に舞った。
辺りでは轟音と悲鳴、火の手や煙が立ち込める中
私は夜空を舞って気持ちが良かった。
思い切り
気の済むまで
体力に限界を迎えるまで
私は飛び続けた。