第19章 番(つがい)
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「おう、お戻りかい?」
「えぇ。ちゃんと戻ってきたわよ。偉いでしょう?」
「お利口さん過ぎて困っちまうなぁ。」
虹丸は、はんっと鼻で笑った。
私がここに来たのは夜明け間近。
虹丸から少し離れたところに止まる。
なぜ少し離れるかと言うと、虹丸の主と話している縦縞柄の男の首には、赤い目をした白蛇が巻きついていたから。
近寄れば喰われてしまう。
「大丈夫だ。アイツは俺らを喰ったりしねえよ。」
「信用できないわ…!!」
私がブルブルと首を振ると、虹丸はククク…と笑った。
私には何故笑ったのかは分からない。
「なぁ、さっきの話だが…」
「あら、もし駆け落ちのお誘いだと思ったらごめんなさいね。」
「私は涼風花魁から離れるつもりはないわ。」
そう。奏は一晩好きに飛んで思い知った。
世の中を知らなすぎる奏には、この外の世界で生きていくのは無理だということを。
こんな小さな体では、すぐに獣に襲われて終わりだと。
外国の血が流れる金糸雀(カナリア)の私には、仲間などいない。
1人で死んでいくだけだ。
それに、涼風花魁を置いてなど、自分だけ自由になることもできなかった。
「そうかい。それなら良かったぜ。」
「俺は…天元様の目になるからな…。」
虹丸の主…天元と呼ばれた男は、左目と左手を失っていた。
「それじゃ、これでお別れね。」
「あぁ。たまには顔を見に来てやろうか?」
「あら?私を好きになっちゃった?」
「は?それは逆の台詞だろ。」
妙な嘘をつかれるよりは、何も話してくれなくて良い。
貴方は、私とは一緒になれない。
鴉と金糸雀…
私たちはどうしたって
番(つがい)にはなれないのだから。
いつかまた会いましょう。
その日までサヨナラ…。
恋心よ。
〜fin〜
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