第18章 11月22日(良い夫婦) 【煉獄】
「良い夫婦…。それは正に俺たちのことだな。」
「ふふ。そうね。たまに喧嘩しちゃうけど。」
「ちゃんと仲直りはできている。
それに、溜め込むより良いだろう?」
「うん。」
杏寿郎が少しだけ、甘い視線を向ける。
俳優の杏寿郎は、最近鬼滅の刃で炎柱の回が放送されているからか、多忙を極める。
だから今日は、体を休めて欲しい。
「今日ね、ご馳走を作ったのよ。
ビーフシチュー。食べる?」
「…それより、君を食べたいと言ったら?」
杏寿郎は私を後ろから抱きしめて
耳元で囁く。
「んっ、せっかく作ったのに?」
なんとか回避しようと、作ったのに食べてくれないの…?アピールをする。
杏寿郎はこれに弱い。
「む…。そうだな。
せっかく作ってくれたのだから、温かいうちに食べよう!」
ほらね。
私の思う通りだわ。
そう思いながら、ビーフシチューを温め直し、パンと飲み物を用意する。
サラダは出してあるし…。
すると、手を洗って着替えて来た杏寿郎が後ろからふわっと抱きしめる。
「もう、シチューたべよ……??」
てっきり、お誘いに来たか、お腹が空いて動けないか…と思っていると、私の目の前には一輪の赤い薔薇。
そして、周りには霞草が散りばめられている小さな花束だった。
「これ…え…?」
私がどういう事かと戸惑っていると、
杏寿郎がニコッと笑って私を向かい合わせにさせた。