第17章 レッツ ポッキー!
「伊之助くん!!」
制服のシャツのボタンを全開にさせた嘴平伊之助。
彼は教師に追いかけられる常習犯である。
「え、お前も…ってことは伊之助くん、追いかけられてる?」
「おう、数学のおっさんにな!つか、お前が逃げてるなんて珍しいな。」
奏は朝のアレコレを話した。
「なんだ?そのポッキーゲームって。」
「このポッキーってお菓子を2人で端から食べて、どこまでいけるかって…ゲームだよ?」
説明しながら、伊之助の顔が輝いていくのがわかった。
…これは、嫌な予感…
「よし!やるぜー!」
やっぱり!
「これは!好きな人とかとやると楽しいってやつで!!」
「んなもん関係ねー!」
伊之助はいつの間にか奏の胸ポケットからポッキーを一本くすねている。
それを奏の口にむぐっと咥えさせ、両肩を掴んできた。
「!!ほんとに⁉︎」
「行くぜ!」
カリッと一口すると、ポッキーの美味しさに感動している。
「うめぇ!」
カリカリと近づいてくる伊之助の可愛らしい顔。
(こ、このままじゃ…)
ぎゅっと目を瞑った時。
「見つけたぞォ!!嘴平ァァ!!」
鬼の形相の不死川実弥が走ってきた。
「んげっ!数学のおっさん!!」
伊之助はパッと離れて駆け出していく。
「西ノ宮ァ、お前もずいぶん楽しそうじゃねぇかァ。」
「!?」
不死川のターゲットは伊之助だ。
だから大丈夫。
…と思っていたのが甘かった。
がしっと掴まれた奏の肩。
ポッキーが、私の口からポロリと落ちた。
「ひぇ…あ、あの…伊之助くん…行っちゃいましたよ?」
「嘴平を匿ってポッキーゲームで餌付けしてるタァ、楽しそうじゃねぇかァ。」
血走った目がジリジリと近づいてくる。
不死川は奏の胸ポケットに入っているのに気づき、一本取る。
「どぉれ。お前がどんだけ根性があるか見てやらァ。」
(いやいや!望んでないし!何でこんなことになってるの?)
「根性ねェのか?」
意地悪にそんなことを聞いてくる。
今日の皆は距離感がおかしい。