第17章 レッツ ポッキー!
「そこで菓子を食うな!!食べるなら昼休みにしろ!!」
ビクッと身体を震わせた拍子に、ポッキーは半分から折れてしまった。
「げっ、冨岡先生…」
声の主は体育教師 冨岡義勇。
校門で立っていたはずなのに、なぜか今は廊下で仁王立ちしている。
「菓子は没収する。」
そう言って冨岡はツカツカと向かってくるではないか。
(しのぶちゃん!万事休す!!!)
そう思ってハラハラしてしのぶを見ていると、自分の咥えていた分をサクサクと口に入れ、膨れツラをする。
「もう、せっかく奏さんもその気になったのに。」
しのぶは奏の胸ポケットに開封されたポッキーの袋を入れ、ニコリと微笑み。
「頑張ってくださいね!」
そう言って、ひらりと蝶が舞うが如く消えてしまった。
「えっ!何しのぶちゃん⁉︎」
奏があたふたと驚いていると、ガシッと掴まれる両頬。
気づけば冨岡の右手に掴まれていた。
「菓子は没収する。」
「ひゃい…」
しのぶには申し訳なかったが、致し方ない。
胸ポケットに入ったポッキーの袋を渡そうと手をかけた時、だんだんと冨岡の顔が近づいてきているのに気づいた。
(えっ⁉︎何?近…ちかっ!!!!!)
冨岡が没収しようとしているのは、奏の咥えているポッキーの方。
まさかの展開に、目を白黒させていたが、そんなことになれば今度は女子生徒に血祭りにされてしまう。
「ひぃっ!!!」
奏は寸前で躱し、パキッと半分のポッキーがまた半分になった。
まさか躱されると思っていなかった冨岡は目を丸くし、驚いていた。
ペコっと頭を下げて、
「今日は勘弁してください!!」
そう言って駆け出した。
「あっ、待てっ」
何故か追われる身となる奏は、どうにかこうにか階段の影に隠れることができた。
「ふぅ…なんだったの?冨岡先生近すぎるよ!」
熱くなった頬をなんとか冷まそうと、手で扇いでいると
「お前も逃げてんのか?」
と、後ろから声がした。