第2章 鳥籠の鳥 ❇︎ 【煉獄】
ついに土曜日が来た。
俺は待ち合わせの30分前に公園に着いた。
楽しみなのもあるが、万が一早く仕事を終わらせた奏が出てきたところを他の奴に奪われでもしたら大変だ。
奏がどんな服装かも俺はちゃんと把握済みだ。
何故かって?
俺の2台目のスマホ。あれは元より奏のために買ったようなもの。
世間ではいけない事だが、奏の番号を手に入れ、ウイルスを侵入させ遠隔で乗っ取っている。
そうすると、スマホのカメラから奏か見えるという訳だ。
我ながら探究熱心だと思う!
もちろん、彼女の部屋着も分かっているし、どんな顔でスマホを見ているかも分かっている!
もう少しで音声も聞けるようになるはずだ!
…む?下着?
…それは、もちろん知っているに決まっているだろう。
そうしていると奏が仕事を終わらせたようだ。
キョロキョロと俺を探しながら公園へと入ってきた。
む。朝と少し髪型が違うな…。
よもや!俺のためにおしゃれをしてくれたのか…!
「西ノ宮さん!お疲れ様です!」
「あっ、煉獄先生!お疲れ様です。すみません、お待たせしましたか?」
「いや、ちょうどさっき着いたばかりですよ!」
自然な嘘をつき、疲れているであろう奏を労う。
「食べたいもの、決まりましたか?」
「そうですね、今日は暑いのでさっぱりとしたものがいいかな。
冷製パスタとか!」
俺がそう言うと、奏はパッと表情を明るくさせた。
「イタリアンなら、良いところを知っています!
私の知り合いの店なんですけど、美味しいですよ!」
知り合い…
その言葉に引っかかるが、俺はその提案に乗ることにする。
奏の知り合いとならば把握しておかなくてはならないからだ。
電車で2駅乗り継いだ場所で降り、15分ほど歩く。
その間は、学校のことや、資料館の話で盛り上がった。
「あ、ここです!」
指さしたのはお洒落なイタリアンダイニング。
お洒落な中でも入りやすい雰囲気だ。
一足先に店に入り、空いているかを確認してくれているのだろう。
そしてニコニコしながら出てきた。
「空いてました。もう少しで席が無くなるところでしたね。」
「それは良かった!」
俺は奏に続いて店に入り固まった。