第16章 trick or treat ❇︎【宇髄】
「奏…ほんとごめん。俺、今年初めて学校で開かれるハロウィンパーティーに張り切んなきゃって、思っててさ…。」
なるほど。
だから最近帰りも遅かったんだ。
…でも。
「私だって、婚約してすぐの誕生日だったから…張り切ったのに。」
「うん。」
「天元の好きなものいっぱい作って待ってたのに。」
「うん。」
私の言うことに頷く天元。
すると、天元の顔が私の耳元に寄せられる。
「なぁ、奏。trick or treat.」
「…ない。」
「んー…じゃぁ、trick or cake?」
「…ない。」
「いや、あるじゃん。俺のために作ってくれたんだろ?食べたいな…。」
天元は甘い声で囁く。
私の耳元に息がかかりくすぐったい。
「trick or cake?」
「…ないっ!」
「いや、あるの分かって…「だって」
私は天元の言葉を遮った。
trick or cake
それでケーキを出したら…
「悪戯…してもらえないじゃん…」
「へ?」