第15章 猫とまたたび 【煉獄】
しかし、事が起こったのはそれから3日ほど経った頃。
流石に彼女を思い浮かべる時間も減ってきた。
このまま、遠い記憶となっていくことだろう。
そう思っていた時。
じゃり…
俺の前に君は現れた。
あの日と同じ白の大きな百合が咲く黒い着物に
半衿の赤が映える。
綺麗な黒髪には赤い花の飾りがあしらわれていた。
「…君は、あの夜の。」
俺がポツリと呟くと、ペコリと頭を下げる。
「あの夜はありがとうございました。」
鈴のなるような声、それはこのような声のことを言うのだと思う。
「何、当然のこと。ご無事で何より!」
俺がそう言うと、彼女はゆっくりとこちらに歩み寄り
くるっと俺の周りを一周する。
「ん?」
彼女の不思議な行動に首を傾げていると、
彼女はあろうことが、俺の胸元にスリッと寄ってくるではないか。
「!!…君?何をしているんだ⁉︎」
流石にここまで積極的な女性は知らなかった。
何より、この清楚で神秘的な印象を持つ彼女がそんな事をするとは…。
俺は慌てて彼女の肩を掴み、自分から引き離す。
「君は、嫁入り前だろう⁉︎恋人でもない男にそんな事をしてはいけない!」
だが、正直俺は全くもって嫌ではないし、
むしろ心地よかった。
しかし、彼女の貞操は守らなければ…!