第1章 贈り物 【時透】
「時透くん、時透くんの好きな食べ物は何?」
「…羊羹。」
「え、それは私の好物でしょう?」
「じゃ、じゃぁ今欲しいものは?」
「なんでもくれるの?」
「なんでも…できる限りのものは。」
「ふうん。」
ふ、ふうんて。
私、西ノ宮奏は霞柱の時透無一郎の元へ来ている。
そして、なぜ彼に根掘り葉掘り聞いているかというと、8月8日が彼の誕生日とのこと。
柱になったばかりの彼をもてなそうと、他の柱たちで祝うことになったのだ。
しかし、彼は記憶障害があるらしく、すぐに色々と忘れてしまう。
既に甘露寺や、胡蝶、宇髄などが薄ら聞き出そうと試みたが、失敗したらしい。
そして、同じ頃の弟を持つ煉獄も時透に聞いたが、馬鹿がつくほど正直者の煉獄は『君の誕生日をみんなで祝おうと思っている!好物は何だ!!』と聞いてしまったらしい。
すると、時透は「そんなことは忘れてしまうから無駄だ」とあしらったそうだ。
いくら煉獄が優しくとも、そんなこと言われたら腹を立てそうだが…。
しょんぼりする煉獄を慰め、伊黒や不死川は睨みを効かせてしまうのでパス、悲鳴嶼はそういうのが苦手だそうだ。
冨岡は…。
うん。
ということで、一番早く懐かれそうだと私が駆り出されたというわけ。
ちなみに私は花柱。
私も去年柱になったばかり。
なので時透からしたら、一番身近な先輩だ。
……だがしかし、私もこの任は完了できそうにありません。
「時透くん、私時透くんのこと知りたいんだけど。」
ちょっと上目遣いしてみる。
…だめ?私の上目遣いじゃ通用しない?
なんとなく…ジト目で見られてる気がする。
「なんで?なんでそんなに知りたいの?」
「なんで…って、同じ柱として…親睦を深めたいなと。」
「それは貴女だけが?」
「いや、みんな思ってるよ!」
「ふうん。」
ふうんて!やっぱりふうんて!
「それじゃ、貴女には俺の欲しいものは伝わらないね。」