第15章 猫とまたたび 【煉獄】
ある任務の時。
町外れの林の中で、鬼の情報が入った。
林の近くを通りかかった者が拐われている様子。
タタタタ…
俺が駆けつけると、暗い林の中でガサガサと蠢く影。
気配は間違いなく鬼である。
「お前か!この林に巣食う鬼とやらは!!」
ギロリと向けられる黄色の瞳。
その瞳孔は縦長だ。
『おいおい、今から俺の食事だというのに…。』
涎の滴る口元を長い舌でぺろりと舐めとるその姿が、月夜に照らされ露となった。
熊と人間が混ざり合ったような姿。
「その巨軀でよく今まで身を潜めてきたな…。」
『お前、人間にしては体格がいい方だろうが、俺の前にくりゃ猫のようだなぁ。』
ニタァ…と笑う鬼が、ゆっくりとこちらに体の向きを変えた。
…よし。鬼の気は完全にこちらに向いたようだ。
鬼がこちらに向かって牙を向こうとする瞬間、
キンッと鍔を弾き、抜刀する。
「炎の呼吸 壱ノ型」
「不知火」
ザンっと鬼の頸が高く舞い上がり、少し離れたところでゴトッと落ちた。
「その猫にやられては、君の力は鼠だな…」
そう言って、ヒュンと血を払い納刀する。