第14章 存在を 【煉獄】
「今日は…こっちだな?」
コツッと蓋を人差し指で叩かれたのは
「うぅ。正解…。」
マンゴーとパッションフルーツ。
「なんで分かったの?」
「今日はたくさん泣いただろう?だからサッパリしたものだろうなと思ったんだ!」
理由までバッチリ。
「…それに、君は隠し事ができないからな。
チラチラとこっちのアイスを見ていた。」
「えっ!うそっ⁉︎」
食べたいアイスを見ちゃってたとか、どんだけバレバレなのよ!
「穴があったら入りたい…。」
「穴があったら、入りたい!!!!」
「もうー!やめてよぉー!せっかく泣き止んだのに!!」
「むぅ!すまない、フリかと思った…。」
私たちは泣き笑い、アイスを食べた。
ちなみに、ストロベリーと悩んでいたのもお見通しで、杏寿郎がそっちを食べて、お裾分けしてくれた。
やっぱり優しい。
食べ終わって、私も落ち着いた頃、杏寿郎はお風呂に向かっていった。
ぼーっとテレビを見ていると、ふと思い立って風呂場へと向かう。
バンッ!!
風呂場の戸を勢いよく開けると、ビクッと肩を跳ねさせる杏寿郎。
彼はシャンプーを流しているところだった。
「ど、どうした急に!!」
逞しく鍛えられた美しい背中。引き締まったお尻…。
じゃなくて!!
「うん、後ろOK!!」
そして、シャワーを浴びている杏寿郎を無視して、ぐるんとこちらを向かせた。
「ほ、よかったです。」
腹に穴は開いていない。
なんだか、不意に心配になってしまったのだ。
目はさっき合わせていたから、実感したんだけど、お腹は未確認だったから。
私は安心して、風呂場から出ようとすると、ガシッと腕を掴まれた。
驚いて顔を上げると、濡れて下に降りた前髪。
そこから覗く綺麗な瞳。
「夫のシャワー中にいきなり入ってきて、全裸をチェックされ「よかった」と呟き出ていくとは…。何が良かったのか分からんが?」
「えっ、いや、あの…」
「奏、君は映画を一緒に観に行った後もそうだったな?」
そう。映画館で初めて観た時、衝撃すぎてすぐに杏寿郎のお腹を触って確認した。
「そして、そのビシャビシャな服でどこに戻るっていうんだ?」
気づけばシャワー中に入って行ったので、自然と飛沫やらなんやらで私の服はビシャビシャだ。