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あなたの…【鬼滅の刃】 短〜中編

第14章 存在を  【煉獄】



「うん…なんとか。」

でも、彼の声と顔を見たらまた泣いてしまいそう。
振り返ってはいけないと思い、正面を向いたまま返事をする。
その私の気持ちを知ってか知らずか…。

むぎゅっ


後ろから両頬を掌で挟んで上を向かせる。

「うむ!涙も止まったみたいだな!」

それはまさに、重傷を負った炭治郎くんに

『全集中常中ができるみたいだな!感心感心!』

と覗き込むシーンでしかない。


「うっ…」

ぶわっ

せっかく引っ込めた涙が、決壊した。


「む⁉︎す、すまん!もう大丈夫かと思ったんだがっ!」

タチが悪いのは、映画の煉獄杏寿郎は、本物の煉獄杏寿郎とまるっきり一緒ってこと。
煉獄杏寿郎になりきるとかではなく、そのままなのだから余計に立ち直れない。


「今日はもう諦めて…」

「わ、分かった。そのうち落ち着くだろう。」

私の頬を解放して、また隣に座る。
コップに水を注いできてくれて、飲むといい、と渡してくれた。

泣きすぎて喉がカラカラな私は、ありがたく飲もうとするけど、鼻が詰まって上手く飲めない。


「水は逃げない、ゆっくり飲むといい。
今、風呂を沸かしているから、沸いたら入ってきなさい。
体を温めると落ち着くだろう?」


本当によくできた夫である。


「うぐ…ん、ありがと…」


なんとか水を飲み干して、鼻をかみ、はぁ…と放心状態のため息をついた。
すると、杏寿郎のスマホに着信が入る。

【着信 竈門炭治郎】


「はい、煉獄です!どうした?竈門少年!」


ふぇ…
プライベートでも竈門少年呼びなの?
もう、やめてよぉ。


「…あぁ。察しの通りだ!俺の顔を見る度に泣いている!」

きっと炭治郎くんが私の心配をして連絡をくれたのだろう。
プライベートでもいい子すぎる…。


少し話して、「では、また!」と電話を切る。


「竈門少年も、君の様子は大丈夫かと心配していたぞ。
泣いていると言ったら、やっぱりと笑っていた。」

「だってさぁ〜…」


若い芽は摘ませないって、煉獄さんだって若いじゃん…。
なのに、身を挺して戦って…最後まで人の心配して…


「煉獄杏寿郎、いい人すぎるでしょうよぉ…」



私はオレンジの手足長いウサギのぬいぐるみを抱きしめ、ソファーに倒れ込んだ。


「それは、俺か?それとも鬼滅の煉獄か?」





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