第13章 鳥籠の鳥 2 ❇︎ 【煉獄】
「さて奏、君は俺の授業で今回赤点だったな…。」
しかも、成績はよろしくないようだ。
「は、はい、すみません。」
生徒らしく答えてみる。
「俺の授業で赤点の者はそういないのだが…。困ったものだな…。」
はぁ、と少しため息をついて、ぐいっと私の顔に煉獄先生の顔が近づいた。
「では、なぜそんな間違いをしたかを教えてもらえるか?
なぜ、他の男と一緒にいたのかを。」
煉獄先生に問われて、私は言葉を詰まらせる。
なぜ…?なんでだっけ…。
「ぼーっと歩いてて…そしたらあの人がいつの間にか肩を掴んでて…「本当か?」
答えを知っているのか、私の言葉を遮ってきた。
そして、煉獄先生はポケットから、あの小さなアドマイザーを取り出した。
そして、シュッと手首に一吹きする。
「…っ!!」
その香りは媚薬のように私を熱くする。
「今のだけでその有り様だ。君はあの男からこの香りがしたから、ついて行ったのだろう?」
「え…そう、なの?」
「よもや、無意識か。
それは尚更問題だな。
たしかに、香水は同じかもしれんが、俺の元の匂いと混ざったこの匂いを覚えてもらわねば。」
煉獄先生は自分の手首を耳の後ろに擦り付ける。
「人の匂いはここが一番感じるそうだ。
君にはこの匂いを覚えてもらう。
そして、他の男よりも、俺が一番君を想って、君を満足させられるということも。」
「…出来具合によっては、君を俺の中に閉じ込める…」
煉獄先生は私の顎をくいっと上げさせて、じっと目を見つめた。
ずっとずっとこの先を待ち望んでいた私は今どんな顔をしているのだろう。
「杏寿郎さん、キス…して…」
私は堪らずお願いする。
「…ちがう、今は…」
「お願いします…煉獄先生…。」