第13章 鳥籠の鳥 2 ❇︎ 【煉獄】
私がこそっとシャワールームから着替えて出ると、目を丸くした杏寿郎さん。
「・・・・・。」
言葉も失うほど痛いらしい。
「ごごごごめんなさい、期待に添えられなくて!
あの、バスローブがあったんでそれを着てきますね!」
私が慌ててシャワールームの扉を閉めようとした時、ガンッとその扉の動きを止められた。
「えっ?」
何ごとかと前を見ると、杏寿郎さんが扉を押さえて私を見下ろしている。
「想像以上だった。」
「はい…?」
杏寿郎さんは私の手を引いて、ベッドルームに置かれた席に座らせた。黒板は流石にクロスに描かれたイラストであったが、背後にあの独特な緑を背負うと、いかにも"先生“という感じだ。
「杏寿郎さん、いつもはそんな感じなんですね。」
思わず見惚れてしまう。
いつもは生徒を前にこんな感じなんだろうな。
いいな…
毎日杏寿郎さんのこんな姿を見れて。
「…ふむ。なんとなく背徳感を感じるが、このシチュエーション。
今から俺を、杏寿郎ではなく先生と呼ぶように。」
私の座る机に右手をつき、左手を腰に当てる。
「は、はい、先生。」
「よし、奏。
それでは面談といこうか。」
どうやら私はこれから、煉獄先生との面談が始まるようだ。