第2章 鳥籠の鳥 ❇︎ 【煉獄】
翌日の月曜日からは俺は機嫌が良かった。
朝、奏が出勤する時間を把握して、竈門ベーカリーの前で偶然会うようにして面識を深め、会ったときには少し他愛のない話をするまでになった。
帰りにはアパートの明かりがついているかを確認する。
それだけでも俺は楽しかった。
しかし、何か物足りない。
もっと見た目に分かるように俺の何かを残したい。
・・・・・・・
「おはようございます!」
「あ、煉獄先生、おはようございます!
授業でいらっしゃるの、明日ですね。楽しみにしています。」
ここ数日で日課になりつつある2人の挨拶。
本当はもっと遅く出勤してもいいのだが、奏に会うために早く出勤している。
しかし、もともと朝5時に起きてランニングをしている俺にしたら、
そんなのは苦ではない。
「そうですね!私も楽しみです!
あ、それでもし良かったら何ですが…」
俺は紙袋を手渡す。
奏が首を傾げながら中を見ると、赤色のカーディガンが綺麗に畳まれて入っている。
「えっ!これは…?」
「先日、母へのプレゼントを家族で見ていたら、このカーディガンが目に溜まって。
奏さん、いつもカーディガン着てるようだから…すみません、急にこんなことして。」
ははは…と少し困ったように笑えば、奏は少し頬を赤らめ
照れたような表情を見せる。
…そんな表情をされては期待してしまうのだが。
「ありがとうございます…。毎日着ているので、嬉しいです。」
そう言って笑う君を。
映すのは俺の瞳だけがいい。
今道を通る他人にも。
誰にも見せたくない。
そう思う俺は、異常だろうか…。