第2章 鳥籠の鳥 ❇︎ 【煉獄】
俺はまず資料館のホームページで彼女の本名を知った。
彼女は奏という名前なのか…。
ぴったりな優しい名前だ。
竈門少年が家にパンを買いに来ると言っていたな。
竈門ベーカリーはどちらかと言えば学校の近くにある。
あそこに買いに来るということは、あの周辺に住んでいるのか?
むぅ…
やはり家などは実際に行ってみないとわからないな!
明日、奏に教えてもらうこととしよう!
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翌日も資料館に出向き、表向きは勉強しに来た歴史の教師。
少し早めに資料館を後にして、近くの公園で彼女が帰宅する時間を待った。
日曜日ということもあり、少し閉館も時間が過ぎていた。
資料館が閉館してから全ての明かりが消えたのはそれから1時間後。
午後6時を過ぎた頃だった。
日の沈みが少し早まってきた頃だからか、午後6時にはだいぶ薄暗かった。
しかし、俺には彼女が出てきたか分かった。
俺は目立つ髪色を隠すように黒いキャップを被り長めの髪を仕舞い込む。
目も合わないように、俯き気味に。
公園の前を何の心配もせずに通り過ぎていく君。
あぁ、なんて無防備なのだろう…
危ない男が後をつけたらどうするんだ。
俺が君の家も把握して、ちゃんと見守ってやらなければ…。
君の後ろを歩く。
なるべく前を見ないように。
さも、目的地が同じ方向なのだという顔で歩く。
君はそんな俺に気づかず、前を歩く。
スーパーに寄って食材を買う。
きちんと自炊をしているのが分かる買い物だった。
きっと君の手料理も美味いのだろうな…。
俺にも作ってくれる日が来るのだろうか。
あぁ、楽しみだな…。
しばらく歩き、やはり竈門ベーカリーの前を通る学校から歩いて10分ほどのアパートに着いた。
階段を上がり、3階の右から2番目のドアの鍵を開ける。
奏…こんなに近くに住んでいたのか。
そうと分かれば、君が毎日無事に帰って来れたか、確認してあげられるな…。
毎日の楽しみができたことに俺は思わず口角を上げる。