第13章 鳥籠の鳥 2 ❇︎ 【煉獄】
男の手は捻りあげられていた。
そしてハッと目線を上げると、それは杏寿郎さんだった。
「杏寿郎…さん…」
私は恐怖と安心と複雑な心境の中、彼の腰に抱きついた。
優しい柔軟剤の匂いがする。
「誰だよ!この女はお前じゃ満足できないんだってよ!だから代わりに俺が…「君に俺の代わりが務まると?」
顔は見えないが、すごい圧を感じる。
「君のその粗末なモノで俺の彼女が満足するとは思えんが…。」
他をあまり知らないが、杏寿郎さんを超える…ってなかなか無いと思う。
「はぁ?第一、この女が誘ってきたんだろ!物欲しそうな顔しやがって!」
「彼女の好みからして君を誘うとは…思えんが。」
チラリと杏寿郎さんが私の方を見る。
好みが変わったとか思われたくない。
「たたたタイプじゃありません!!」
「…だそうだ。」
「お前ら!2人揃ってふざけんじゃねえぞ!!」
男は拳を杏寿郎さんの顔面目掛けて打ち込んできた。
ミシッ
…となったのは男の手。杏寿郎さんは拳を掌で受け止めて、それを握ったのだ。
「い、いてぇ!!!」
あまりの痛さに涙を浮かべながら、男は逃げていった。