第13章 鳥籠の鳥 2 ❇︎ 【煉獄】
「煉獄!迎えに行け!すぐ!!」
宇髄に言われて俺は急いで学校を出た。
『毎日のように求めあっていたのに
急に指一本も触れられなくなったら、
愛想尽かして他の男に行っても仕方ねぇぞ⁉︎
第一、お前は少し歪んだ躾方してんだから
彼女が何するかわからねぇだろ!!』
宇髄の言葉が頭を巡る。
歪んだ躾などした覚えはないが、
でも、昨日泣くほど求められたのに断ってしまった。
それに香水をつけて煽っておいて…。
良かれと思っていたが、宇髄にはこっ酷く叱られた…。
電車を降りて、資料館へと走った。
時間は奏の定時を少し過ぎたところ。
「はぁ、はぁ…奏…。」
まだだといいのだが…。
すると、ポニーテールの女性が近づいてきた。
「あれ?もしかして…西ノ宮さんの…」
「こんにちは、奏は…まだ?」
「西ノ宮さんは数分前に帰りましたよ。」
「…何?」
駅までの道のり、すれ違いもしなかった。
女性に礼を言って俺は奏を探す。
電話をかけても出ない。
どこに行ったんだ…。
駅の近くまできたところで、覚えのある後ろ姿が見えた。
トボトボと歩く姿。
『奏』と呼ぼうとした時、
彼女の肩に知らない男が腕を回す。
彼女の耳元で何かを囁いていた。
「…まさか…」
本当に…?
宇髄の言葉が現実となってしまうのだろうか。
俺は奏に触れられるこの日をどれだけ待ち望んでいたと思う?
君に不安を感じさせないように、愛は伝えてきたはずだ。
でも、君は他の男を選ぶというのか…?
俺の中の血が一気に引いていく感覚がした。