第12章 恋に変わるまで 【村田】
「…知っていました。」
「し、知ってました⁉︎」
それは、どういうことか?
なぜ知っているんだ?
「ほんのり分かっていたんです。でも、まさかと思って。」
「それで…まだ好きとかは分からないんですけど…、その…もっと、村田さんとお話ししたいなって。」
それは村田にも可能性が十分にあるということ。
この展開に村田の心は舞い上がらずにはいられない。
「ももももちろんっ!!俺のこと、なんでも教える!
だから、奏ちゃんのことももっと教えてほしいっ!」
勢いよく立ち上がり、村田は声を張り上げた。
「ふふ。はい。」
そう笑う奏を、思わず抱きしめたくなったが
可能性があるだけで、まだ恋仲などではない。
ググッと抑える村田。
そんな彼の仕草に、頬を染める奏。
「あのー…。もう出て行っても良いかね?」
そう言って奥の部屋から出てきたのは店主と女将。
2人を気遣って出てくるのを待っていてくれたようだ。
「やだっ、2人とも聞いてらしたんですか?」
そうだったと奏も思い出したように頬を染める。
「…若いって、いいわねぇ。」
女将さんが、店主に微笑みながらそう言った。
「俺たちにも、そんな頃もあったなぁ。」
そう笑う2人は街で評判のおしどり夫婦。
いつかは…この2人のように
なれるのだろうか。