第12章 恋に変わるまで 【村田】
北北西の任務は大したことはなかった。
むしろ、村田は八つ当たりのように鬼を斬った。
「なんなんだよ!あの鬼っ!」
別に鬼に何されたわけでもないが、ぶつくさと文句を言いながら家路を急ぐ。
すると村田の鴉が慌てた様子で飛んできた。
『鬼、襲来!鬼、襲来!!
娘ノイル 茶屋、危ナイ!!』
「はぁ⁉︎奏さんのいる茶屋か⁉︎」
村田は急いで向かった。
鬼の情報はない。
急ぎながら村田の頭には不安が過ぎる。
怪我人はいないだろうか。
奏さんは無事だろうか…。
そして、俺には倒せる鬼なのだろうか。
十二鬼月だったならばどうする…。
(そんなことばかり考えるな!頑張れ俺!!)
しばらく走ると女性の悲鳴が聞こえる。
「くそっ!店の方からかっ!」
店の中からは皿の割れる音や、何かが倒れる音がする。
辺りを見渡すと、鬼殺隊士は誰もいない。
「つまり、俺1人か…」
村田の頭にはまた負の感情が生まれるが、頭を振ってその考えを捨てる。
「よしっ!!」
日輪刀を握り直し、村田は店の中へと進む。
中では店主が包丁を手に鬼と対峙していた。
2メートルはあるデカい図体を持つ鬼は、
店主の後ろにいる奏を狙っているようだった。
「おい、鬼!その人達に手出しをするな!!」
威勢よく叫んでみたが、なかなかに怖い。
村田の声に反応した鬼はぐるっと振り返った。
その目には
「下弦の…陸…」
その数字を見た瞬間、頭の中では
まずいまずい…と、繰り返される。
鬼はビュンっと腕を伸ばし村田を弾き飛ばそうとする。
「水の呼吸 壱ノ型 水面斬りっ!!!」
パシャっと水が弾いたような斬撃が鬼の腕を斬り落とす。
その鬼は髪の毛が長く、その髪を自在に操れるようだ。
鬼の髪の毛が村田を中心に絡み付こうと伸びてくる。
それを刀で斬りながら、店主たちを店のずっと奥に隠した…。
と、思った時…
「痛っ…」
足を挫いてしまい倒れる奏。
それを見逃さず、捕らえようと笑う鬼。
「血鬼術 締縄樹海(しめなわじゅかい)」
鬼の髪が締縄のように太く編まれ、それが何本も樹海のように襲いくる。
「奏さん!奏さんに手出しするなァァ!!」
「水の呼吸 弐ノ型 水車!」