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あなたの…【鬼滅の刃】 短〜中編

第12章 恋に変わるまで 【村田】


「はい、お待たせしました。」

奏があん団子と緑茶を運んできた。
辺りを見ると、客はいない。


「今は…俺だけ?」

「はい。先程までは何名かいらしたんですけどね。」


(こ、これは…チャンスなんじゃないか⁉︎)


「あ、あ、あのっ、よければたまにはご一緒にどうですか?」


村田の渾身のお誘い。
まさかの客からの発言に、目をパチパチさせる。


(やっぱり…だめだったか…?)


「いいのですか?うれしいっ」


そう言って笑う奏に、村田の心は完全に持っていかれた。


「ちょっと待っててくださいね。」


店の奥へと入っていく奏。
どうやら店主に訳を話しているようだ。
そして、奏の分のお茶を持ってやってきた。

「それじゃ、お隣失礼します。」


店先に出された赤い毛氈が敷かれた椅子に腰掛ける。
隣…正しくは日焼けの赤い野店傘がかかっているので、その柄が2人を隔てている。


「今日もお仕事なんですか?」

「えっ、あっ、うん。今日は北北西にって。」

この店には沢山の隊士が訪れるため、奏も鬼殺隊についてはある程度知っている。


「毎日、命がけで戦ってくださる皆さんには、頭が上がりませんね。」

「強くならないと、やっぱり生き残れないからな…。」

「でも、今こうして生きてらっしゃるってことは、村田さんもお強いんですね。」

眩しい程の笑顔が村田の心に刺さる。


「お、俺は…」

『俺は強いから、鬼なんて片っ端から斬ってやるぜ!!』
そんなことが言えたなら、どれだけいいか…。
しかし、こんな嘘をついたところでどうなる?もし本当のことがバレたならば、嫌われるに違いない。


「俺は、強い…わけじゃないんだ。運が強い、とは思っている。
でも、鬼殺隊としてはまだまだ。
同期には柱になった奴もいてさ。水柱の…冨岡…。
俺、同期なんだ。」

「あぁ、冨岡様も。」

「あいつはすげえよ。血反吐を吐くような努力をしてグングン出世していった。
俺も頑張ってはいるけれど、なかなか追いつけないしさぁ。」


村田はそこまで話してピタリと止まる。

あれ?なんで俺愚痴を言ってるんだ?
想いを伝えるんじゃなかったのか?
それによりによって、富岡を褒めてる…。
これじゃ、俺の株は上がらないじゃんか!!
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