第11章 そういうところ 【伊黒】
その後2人は、奏の家まで歩き、家に着くと家族が泣いて抱きついてきた。
伊黒が事の成り行きを説明し、自分のせいだと詫びると奏の家族は首を振る。
「生きて帰らなかったら…とは思いますが、こうして約束通り生きて帰してくれました。
それに、奏を想っていてくれたと…。ありがとうございます。」
奏の父が頭を下げる。
伊黒は居た堪れず、また口元の包帯を解く。
そして、奏の家族にも生い立ちの話をした。
黙って聞いていた奏の家族は話を聞き終えると、静かに頷いた。
「お話は分かりました。それで、伊黒様は負い目を感じていると。」
伊黒は頷く。
「全てを塗り替えるのは無理だと思いますが、これからは私たちを家族だと思っていただければ幸いです。
奏の事を想ってくださっている人ならば、その方も息子同然です。」
そうニコッと笑う奏の家族には感服だ。
伊黒は観念したように、微笑む。
「ありがとうございます。」
「それで?2人は交際するのかな?」
ニコニコと尋ねる両親。
「こっ、交際っ⁉︎」
しどろもどろしている伊黒に対して、奏はガバッと縞柄の腕に抱きついた。
「はいっ!もちろんですっ!!」
伊黒は急な密着と、交際という展開に血圧が急上昇し、目を回してバタッと倒れた。
「い、伊黒様!!」