第11章 そういうところ 【伊黒】
伊黒は警護巡回をしながら考えていた。
奏が失恋したようだ…という事は
想い人がいるということだ。
しかも、店に立たないほど心に傷を負っている。
「まぁ、そうか。そうだよな。」
信用しない。
信用したくない。
しかし、あんなに可愛い年頃の娘。
想い人がいない方がおかしいのかもしれない。
「想ったところでどうする。俺には穢れた血が流れているんだ。
どうにもできないくせに。」
伊黒は自分の掌を見てグッと拳を握った。
そして反対の手で口元の包帯に触れる。
(この口を見たら…君は何と思うのだろうか。)
すると、どこからか声が聞こえた。
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「姉さん!姉さーん!」
翔太郎の声。
まだ日が沈んでままないとは言え、もう暗い。
この状況で大声を出すのは危険だ。
伊黒はすぐに翔太郎の元へと駆けつける。
「…乾物屋の息子だな?」
「…!!伊黒様!!」
突然の伊黒の登場に驚く翔太郎。
翔太郎は奏がまだ家に帰っていないと話した。
「分かった。姉は俺が見つける。君は家に戻れ。…鬼が出る。」
「鬼が…⁉︎姉ちゃんも…姉ちゃんも!!」
切羽詰まった顔になる翔太郎。
伊黒は間違った事は言っていないが、今は不安を煽ったしまったと後悔した。
「…俺は鬼狩りだ。大丈夫、奏は俺が無事に連れ帰るから。」
両親も探しているというので、両親にも自分が鬼殺隊である事を話し、家に入ってもらった。
「娘を…、娘をどうか…!!」
「分かっている…」
そう言って、小芭内はすぐに奏を探しに向かった。