第10章 現代鬼殺隊 【竈門】
夢の呼吸…と呼ばれた技は強い眠気を誘う。
(なんだ…⁉︎菫の香りとともに強い眠気が…!!!)
鼻の利く炭治郎にはとても辛い状況である。
口裂け女のような鬼は中々に手強いようで、奏が一瞬で頸を斬ろうとすると、上半身を後ろにぐんっと反らせ攻撃を避ける。
「!!!」
(くそっ、眠るわけにはいかないんだ…!!)
炭治郎は呼吸を止めて、援護しなければと構えを取る。
(水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!!!)
岸辺に打ちつける波の如く、波状の攻撃が鬼に容赦なく撃ち込まれる。
その波は鬼を動かなくし、隙を与えていた。
「夢の呼吸 壱ノ型 一睡之夢!!」
奏はその隙に…と、また壱ノ型を入れる。
動けなくなった鬼の頸は刎ねられ、少し離れたところに落ちた。
そして、塵となり消えていく…。
鬼も元は人間だったという。
この女性は、美にこだわりを強く持っていたのだろうか…。
今となっては知る由もない。
ヒュンと刀を一振りし振り返ると、炭治郎がガタっと膝をつき倒れてしまった。
菫の誘眠に当てられてしまったのだ。
奏は炭治郎に駆け寄り、公園のベンチに座らせた。
「八重、お願い!」
八重は奏の肩に止まると、小さな巾着を咥えている。
それを奏に渡した。
中からは小さな金平糖。
これには覚醒の効力があり、万が一夢の呼吸で眠ってしまった人に食べさせている。
まず高校生の口に入れる。
じわりと効いてくるはずだ。
そして、炭治郎にも。
カランと小さな音を立てて口に入ったことを確認すると、奏はその場を離れた。
「ごめんね、炭治郎くん…」
その姿が見えなくなる頃、炭治郎は薄らと目を開ける。
「…奏…」