第10章 現代鬼殺隊 【竈門】
『血鬼術 美粧疑心』
すると、鬼を囲うように白いモヤのようなものがかかる。
目を凝らしてみると、そこには最初に立っていた綺麗な女性の姿。
『お願い、助けて…。こっちにきて…』
猫のような声で助けを求める。
先程まで鬼の醜悪な姿を見ていたというのに、そのことは頭から抜けてしまい、ゆらゆらと女の方に足が動く。
「…!!」
(まずい、炭治郎くんも変な血鬼術にかかってしまったの⁉︎)
高校生2人と炭治郎が女の元へと歩いて行く。
ニヤニヤと笑う女が手を伸ばし、もう少しで高校生に手が届きそうになる。
「夢の呼吸 弐ノ型」
「夢幻泡沫(むげんほうまつ)!!」
奏は踏み込み、手が届く前に女の腕を斬り落とした。
ゴト…と落ちた腕は切り口から泡のようにぷくぷくと消えて行く。
『女…』
ギロッと奏を睨みつける鬼。
菫の香りが辺りに漂い、段々と鬼を眠りへと誘って行く。
同時に、高校生2人も眠りについてしまった。
「…やっぱり…」
鬼だけでなく、人も眠らせてしまうのか…。
なかなか鬼だけを眠らせたいが、うまくいかないものだ。
「炭治郎くん!炭治郎くん!」
とにかく、この2人を安全なところに移動させなくては。
バレるバレないなど言ってられない。
奏は炭治郎の目を覚まさせるために呼びかけた。
「竈門炭治郎!!!」
奏が一際大声で叫ぶと、ハッと目を覚ます炭治郎。
「…!俺…」
「この2人を安全な場所に!はやく!!」
炭治郎はいつの間にか自分の前にいる黒猫の半面を付けた女に驚いた。
しかし、眠っている様子の高校生にすぐに意識を向け、2人を抱え木下にもたれ掛けさせた。
匂いで探るに、周りには危険はなさそうだ。
「夢の呼吸 壱ノ型 一睡之夢!!」