第2章 鳥籠の鳥 ❇︎ 【煉獄】
ある金曜日の午後5時。
俺は定時で仕事を切り上げ、電車に乗った。
今日は5時半から資料館との打ち合わせとなっている。
電車を降りると、秋の風が吹き始める。
まだ寒くはないが、長袖のシャツを捲るくらいが丁度良い。
資料館は駅から10分程歩いたところにある。
整備された綺麗な施設だ。
閉館時間が過ぎているが入り口で待っていてくれるとのことだった。
少し急ぎ気味に資料館まで行くと、何とか5分前に着くことができた。
待つのは正面入り口で良かったのだろうか。
そんなことを思いながら歩いていくと、1人の女性が立っていた。
「お待たせいたしました!
キメツ学園の煉獄です!」
駆け寄り、自分が待ち合わせの相手だと名乗ると、女性は少し目を見開き驚いた顔をする。
まぁ、無理もない。
俺は髪の色は金色に毛先が所々赤い。
大体は初めて見ると驚く。
飲み会などで大抵の女はこの髪色に食いつき、話を持ちかけてくる。
俺は興味がないので相手にしないが。
この女性は第一印象は良い人そう。
柔らかな雰囲気を纏った彼女は雰囲気も顔立ちも
正直好みなタイプだった。
「初めまして。
お電話でお話しさせていただいた西ノ宮です。
今日はわざわざありがとうございます。」
にこりと笑う彼女の笑顔に釘付けになった。
可愛い…。
「いえ!むしろ、こちらがお時間頂戴いたしまして…!」
「いえいえ。では、早速中で打ち合わせを…」
西ノ宮さんの案内で、応接室へと通された。
俺が座ると、麦茶を用意してくれた。
「今回はどの辺の授業をされているのですか?」
「今は織田信長についてが始まったところです!
なので、信長周辺が中心になるかと…。」
なるほど…と西ノ宮さんはメモをとりながら、分厚い資料集を捲る。
この手の解説に慣れているのだろう。
資料集には沢山の付箋や書き込みがしてあった。
「それは何が書き込まれているのですか?」
俺は自分の授業に活かせるものがあればと思うのと、彼女がどう勉強しているのかが気になった。
「あ、これは、解説をしていく中でどの話題が食いつきが良かったかとか、どう伝えたほうが分かりやすいかを書き込んでいるんです。この資料集は毎回目を通しますし、私しか見ないので。」